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草木も眠る丑三つ時。
みなさんいかがお過ごしですか?

そんなに怖くないけど、不思議な体験をした話です。
良かったら聞いてください…。

あれはボクがまだ高校生の時でした。
高校時代って、友達の家に遊びに行くって機会があんま無かったんで、当時のことはよく覚えてます。

M村の方から通ってる友達が「夏休みうちへ遊びに来うへん?」というので、行くことにしたんです。


松阪からM村への行き方というと、JRを使うことになります。

近鉄で松阪まで行って、そこからJR…ってのでも良かったんですが、わずかでも電車代をケチろうと、自転車で徳和駅まで行って、徳和駅からJRに乗ってA駅まで向かいました。
それが悲劇の始まり…ではありません!
(不思議な体験は帰りに起こります!)

某A駅で降りて、迎えに来てくれてた友達と合流しました。
松阪では体験することの出来ないほどのキレイな川で遊んだり、友達の家でカレーをご馳走になったり、とても有意義な一日を過ごしたのです。

夏だったので、夕方とは言え、まだまだ日が落ちるような感じではなかったんですが、JRに乗って帰らなくてはいけない関係で、割と早くA駅を出発し、家路へと向かいました。

揺れる一両編成の電車。
目一杯遊んで疲れたこともあってか、ついウトウトしてしまったんです…。
どれくらい眠ったか…。

ハッ!と目が覚めた時は知らない駅に着いてました!
どれくらい寝てたかわからなかったんで、正直「ヤバイ!寝過ごした!?」としか思えませんでした!

今回、一人でJRに乗ってM川方面へ行くのは初めてだったこともあり、行きには駅名や駅の様子をすごい集中して見てたので、徳和~A駅間はどんな駅を通ったかってのをすごく覚えてました!
で、ここはどう見ても行きに通った覚えのない駅だったんで、ちょっと寝ぼけながらも、これは徳和~A駅の間ではない!って思ったんです。

なので、普通にボクの思考回路は「松阪駅を通り過ぎて、知らない駅まで来てしまった!?」というところに行き着きました!


そう思った瞬間、ここで下りて引き返さないと!っていう考えに至り、ソッコーで下車しました!

ボクが下りると、扉がプッシューっと音を立てて閉まり、ゆっくりと走り出しました…。
それを見送って、ボクは呆然とします…。
ここ、どこや…?

辺りは森というか山です!
完全に山の中に駅があるって感じで、ホームも本当にホームだけある!みたいな感じでした…。
当然のことながら、無人駅の様子…。


後で思えば、無人駅なのに切符取られなかったな…って思うんですが、当時は「ここ何処?」ってことにしか頭になくて、切符のことなんてこれっぽっちも考えてませんでした。

ポツンと建ってる駅名の標識を見ると「Y添駅」と書いてあります。
え!?Y添?
それを見た瞬間、ちょっと安心しました!
Y添っていう町は聞き覚えがあったのです!
というか、うちのばあちゃんが住んでる町です!
(聞き覚えがあるというレベルではなく、よく知ってる町!)

それを見てすごい安堵感に包まれたボクは「あーよかった…」と心の中で思いました。
で、そうなると、次は「あれ?じゃあ徳和も松阪も過ぎてないやん!」という考えに至ります!

じゃあ引き返すんじゃなくて、次に来る電車に乗らな!と思い、時刻表を探しました。
けれど不思議なことに、どこにも時刻表は見当たりません…。

ってかそもそも、Y添に駅あったっけ?
無かったよな…?
でも知らないうちに出来てた?とか…?
まだ作りかけの駅で、たまたまそこで停車してる時に下りてしもた…?とか…?
(冷静に考えると、そんなことはあり得ないんですが、当時は本気でそんな風に思ってたんです!)

日も暮れてきて、空は夏の夕方に相応しい茜色になって来ました。
そこでボクは、こりゃもう歩いて帰った方が早いな!と気付きます!
(JRのイメージって、1時間や2時間に1本って思ってたので…)

ホームから出るというか…、出ようにも道らしい道が無かったんで、線路の方へ飛び降りて、多分こっちかな?って方向へ歩き出します。
歩きはじめてしばらくすると、石段のようなものが目に入って来ました!


おー!ここはもしかしてY添神社じゃない?って思い、すごく懐かしい気分になったのを覚えてます!

子どもの頃、ばあちゃんちに従兄弟同士が集まると、この神社とか公園とかでどんぐりを拾い、それをお金変わりにしてままごとのようなことをしてたのを思い出しました!


この時点でもう怖さは全然なくて、懐かしい!っていう感情しかありませんでした。

神社の石段から車が通れるような普通の道へ下り、ばあちゃんちがある方へ向かいます。
あわよくば、おじさんかおばさんが、家まで送ってくれんかな…?みたいな期待も込めて、意気揚々と歩き出します!

神社から集落まではちょっと離れてて、何もない道が300~400メートルくらいあったと思います。
その間も懐かしさに駆られて、草をむしったりしながら歩いてました。

しばらく歩くと何か違和感があることに気付きます…。


田舎とは言え、誰も居ないよな…。
山とは反対側に田んぼや畑もありますが誰も居ません…。
ってか、姿が見えないというより気配がしないって感じ…。
そして、車も1台も通りません…。

Y添の集落へ入る直前に、あることに気付きました。
道がない…。
いや、自分が通ってきた&これから通ろうとしてる道はあるんですよ。
ただ、田んぼがある方向に見えるはずの、新しくできた広い道がありません!
普段ならそっちに広い道があって、車が結構通ってるはずなのに…。


で、その道はまだ途中までしか出来てないから、この辺りの横道を通ってこっちの道へ曲がって来る車が、何台か居てもおかしくないのに…。
それどころか、ここにあるはずの横道もない…。
何かがおかしい気がしてきました…。

本能が、これ以上進むとヤバいかもよ…。と語りかけてきます。
進むか…?戻るか…?どうする?


めっきり歩みは遅くなり、すごく迷いました。

えーい、ここまで来たら、とりあえずばあちゃんちまでは行ったれー!と思い、集落へ歩み始めた時です!


ウゥーーーーーーーーーーーーーーーー!とサイレンが響きます!


ちびりそうなくらいビックリしました!

後々考えると、夕方の5時とか6時とかに鳴る、田舎独特の放送サイレンだと思います。
が、その当時はもう悪魔の叫び声にしか聞こえません!


振り向いて、猛ダッシュ!
別に何かが追いかけて来るってわけでもないのに、超ダッシュです!

ーーーウゥゥ…。


とサイレンが鳴り終えるのも聞かず、Bダッシュ!

 

何が怖くなったのかわかりませんが、当時はあまりに怖くて、うぉーーーーー!と叫びながら走ってました!
ゼエゼエ言いながら、石段を2段も3段もすっ飛ばすハイジャンプで、神社の方へ登って行きます!


冷静にツッコミを入れるなら「駅の方へ戻る方が怖いだろ!」って話ですが、当時はもうそんなこと考えてる余裕はありません!

とにかく戻ろう!
あの町から離れよう!
と,必死だったんです!

線路が見えてホッとするも束の間!


駅!?
電車!?
どっちだっけ!?
と、もう錯乱状態で探します!

これも冷静になればすぐわかるんですが、当時はもうどっちでもいいから線路の上を行ってまえー!って感じでとにかく突き進みます!
するとすぐに、駅どころか電車の姿を発見!


マジか!
乗る!
それ絶対乗る!
乗るから動くなよ!

またもや、うおー!と叫びながら猛ダッシュして、電車に飛び乗りました!

ゼエゼエ、ハアハア言って、もう限界…。
息を切らして席になだれ込みます…。


乗ったら乗客が誰も居なくて、さらなる恐怖が待ち受ける…
ってことにはなりませんでした。
普通に乗客居ます!

そして普通に、「この子大丈夫か?」みたいな目で見てきます。
それを感じて、あぁ助かった…と思いました。


と同時に、全力疾走しすぎたせいか、酸欠?みたいな状態になって、頭がクラクラしてきました…。

そっからすごく頭がボーッとして、電車がいつ出発したのかも覚えてません…。


しばらくして、意識が朦朧とする中、電車は無事に徳和駅に到着しました。
お客さんが普通に下りたり乗ったりしてます。
朦朧としながらも、ひと安心…。

ただ、この状態で自転車乗って帰れない!ってのと、一人になりたくねー!っていう思いで、そのまま松阪駅まで乗って行きました。
松阪へ着いてもまだ心臓がバクバクしてます…。


心臓バクバクしたまま、改めてJRの路線図を見ても、やっぱり「Y添駅」はありません!
(似たような名前の「K添駅」はあったけど、絶対そこではない!)

その後は無事、近鉄に乗り換えて、自分の家の最寄り駅まで帰りました。
家に帰った後で、あれは何だったのか?疲れてたせいで、長い夢でも見てたのか…?
と思いました。

と、当時の話はこれでおしまい。
ね?そんなに怖くはなかったでしょ?
おもしろかった?
じゃーねーい!
と、一休さん風に話を終わらせたかったんですが、本当にビックリする話はその十数年後に起こります!

(こっから先は完全なる余談です。初代の松阪ウォーカーに載ってますので、気になる方はそちらをご覧ください)

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